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ダイバーシティ経営を行う方法は? メリットや取り組み事例を解説

著者:   bizocean編集部

ダイバーシティ経営を行う方法は? メリットや取り組み事例を解説

市場のグローバル化や労働力不足を背景に、昨今その必要性が増しているのがダイバーシティ経営です。

ダイバーシティ経営を導入する際のポイントは、「従業員の意識改革」と「一体感の醸成」です。

この記事では以上のポイントについて、メリットや具体例にも言及しながら深く掘り下げてご紹介します。


今注目の「ダイバーシティ経営」とは

ダイバーシティ(diversity)とは、「多様性」を意味する言葉です。従業員一人一人の多様性を受容し、企業経営に生かすことをダイバーシティ経営といいます。

人はそれぞれ異なる要素を持っています。年齢、性別、価値観、人種、言語、ライフスタイルなどは比較的簡単に見分けられる違いです。しかし中には、宗教、価値観、職歴、育ってきた環境など見分けることが難しく、見落とされがちなものもあります。

このように気付きにくい違いにも目を向けて、企業経営に取り入れることがダイバーシティ経営なのです。


なぜダイバーシティが注目されているのか

ではなぜ、今ダイバーシティ経営が注目されるのでしょうか。

顧客ニーズの多様化

インターネット普及以前は、消費者の中にマスと呼ばれる集団ニーズが存在しました。

しかし、インターネットが普及したことで人々のライフスタイルや価値観は多様化します。一律に皆が同じものを求めるわけではなくなったのです。

そうした中で、多くの人に支持される商品やある一定層に刺さる商品を開発するためには、企業側も多様な視点を持たなくてはいけなくなりました。様々な経験、価値観、個性を持った人材を集めることで、そうした多様化したニーズに対応できると考えられます。

市場のグローバル化

グローバル化が進んだことによる変化に対応するため、多様な人材からの活躍が求められるようになり、ダイバーシティ経営が促進されています。

グローバル化以前の国内企業は国内消費によって企業活動が支えられていました。グローバル化が進展した昨今では、海外企業との激しい競争にもさらされています。

例えば、中国や東南アジア諸国は安い賃金を武器に、日本企業の工場を次々と誘致しています。

海外企業との競争は人材の国外流出という面でも起きています。もし高いスキルを持つ人材であれば、シリコンバレーなど国外であろうとより高い給料を求めて簡単に転職できる時代です。

従来の日本企業に見られた経営スタイルでは、このように大きく変化する市場環境に柔軟かつ迅速に対応できません。そのためダイバーシティ経営が注目されるのです。

少子高齢化

少子高齢化により国内の労働力不足が深刻化し、人材の確保が厳しくなっています。その結果、従来の男性従業員・フルタイム勤務という労働条件からの脱却は必須です。

そのほか、人材不足の解決策として挙げられるのが、女性や外国人労働者、シニア世代や障害のある方など様々な人材の雇用です。

例えば、子育てをしている女性の雇用を増やす方法として、産休や育休を取りやすくしたり、フレックスタイム制を導入したりすることが考えられます。

このように労働力不足を解決するためにも、少子高齢化への対応が求められるのです。

働き方の多様化

ノマドワークやテレワークといった働き方の多様化もダイバーシティが注目される背景にあります。

ノマド(nomad)とは、放浪者や遊牧民を意味する言葉です。そこから、パソコンを利用し、場所や時間に縛られない働き方を指すようになりました。満員電車で職場に行き、決まった時間まで働き続ける、という働き方は、従来当たり前でした。

しかし、このような働き方を望まない若い層の間で、ノマドワークは普及しています。

総務省の調査結果では、民間企業におけるテレワーク急速拡大についてのデータが発表されました。企業全体のテレワーク実施率は感染直後の2020年3月は17.6%でしたが、1年後の2021年3月には38.4%まで上昇しています。
(参照元:総務省:テレワークの実施状況


ダイバーシティ経営を取り入れるメリット

では実際にダイバーシティ経営を取り入れると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

採用力の強化と離職率の低下

ダイバーシティ経営を取り入れ、多様な働き方を認めることで、魅力的な職場環境を作り出せます。その結果、幅広い人材の確保と離職率の低下に繋げられるでしょう。

特に労働力人口が減少する日本にとっては、外国人労働者の採用は必務です。労働力を確保するという意味だけでなく、国籍や価値観の多様性を生み出し、従来では考えられなかったアイデアを取り入れるきっかけにもなります。

また、子育てや介護と両立しやすい環境を作れば女性社員の増加にも繋がります。結婚や子育てをきっかけに退職せざるを得なかった女性社員の退職を防げるでしょう。

生産性の向上

内閣府の調査では、性別や国籍といった多様性を有する企業は収益性の向上を達成するという調査が発表されています。

この調査では「売上高経常利益率」と「経常利益率」という2つの企業業績を表す指標に対して、「年齢の多様性」、「性別の多様性」、「国籍の多様性」それぞれ3つの多様性が相関関係を持っているかどうか調べています。

調査の結果、「年齢の多様性」は企業業績にマイナスの影響があるのに対して、「性別の多様性」と「国籍の多様性」はプラスの影響を持っていることが分かりました。

企業イメージの向上

ダイバーシティ経営は企業の利益になるだけでなく、ステークホルダーからも求められるという側面があります。

グローバル投資家は投資判断を行う際、取締役会の多様性を重視します。また、投資家だけでなく、顧客や市場もダイバーシティ経営を取り入れている企業を評価する傾向にあります。

近年ESGという言葉を頻繁に耳にしますが、ダイバーシティもその中のS(Social:社会)に繋がる言葉です。

このように多様な人材を受け入れることは社会に対する企業の責任として考えられるようになりました。ダイバーシティ経営を達成することで、ステークホルダーからの評価や信頼を得て、さらなる事業成長が期待できます。

イノベーションの創出

イノベーションは「プロダクトイノベーション」と「プロセスイノベーション」の2つに大別されます。

「プロダクトイノベーション」とは商品やサービスそれ自体の改良や開発を指します。「プロセスイノベーション」とは開発から製造、販売までの方法の改良や開発を意味します。

異なるバックグラウンドを持つ人材が集まることで、様々な意見の創出が可能です。ある人にとっては当たり前だと思っていたものでも、別の人にはそうではないことは大いにあります。これにより、多様化するニーズをつかみやすくもなるでしょう。

先の内閣府調査の例でもお見せしたように、多様な人材を集めることで企業業績の向上が見込めます。プロダクトやプロセスの改良の場面において、そのような意見の違いを盛り込むことで、それまで気付かなかったイノベーションが引き起こされる可能性があるのです。


ダイバーシティ経営を成功させるポイント

では、実際にダイバーシティ経営を行う上で、大事なポイントを確認しましょう。

従業員の意識改革を進める

従業員一人一人が多様性の価値を理解し受け入れるためには、会社が主体的になって社員教育を行う必要があります。

まずは他者との違いを理解し、互いにリスペクトをし合う心を浸透させましょう。その上で、従業員同士が話し合いを行える場や機会を提供することも重要です。

多様性は新しいアイデアの創出に繋がりますが、同時に異なる意見が衝突し、社員間に亀裂が生じる可能性もあります。定期的なミーティングやレクリエーションを実施したり、共有スペースを設けたりすることで、このような衝突を防ぐことも大事です。

一体感を醸成する

従業員にはそれぞれ目標があるものですが、多様性を認めただけでは、各々が好きな事をしてしまい、企業として破綻する恐れがあります。それを防ぐために、企業として目指す方向を従業員それぞれがきちんと理解することも重要です。

会社の目標を明確に示し、従業員に浸透させることで、企業と従業員が一緒になって同じ目標に向かって進めます。


実際の企業事例

日本にはすでにダイバーシティ経営を成功させている企業が何社もあります。自社でダイバーシティ経営を導入する際に、これら先行事例に目を通しておくことは非常に有益です。

女性の管理職登用を推進した事例

1999年にフランスの自動車会社ルノーと提携を始めたことをきっかけにダイバーシティ経営を導入した日産自動車株式会社は、女性の職場活躍を目指しました。

まずメンターキャリアアドバイザー制度を導入することで、心理面やキャリアマネジメント思考の育成をサポートしました。これによって、女性でも管理職を続けやすい環境を作ったのです。

社を代表する自動車に「ノート」がありますが、この商品企画責任者は女性です。消費者の自動車購入時のキーパーソンは実は女性である、という事実から女性を責任者に抜擢することで、女性顧客ニーズの取り込みに成功しました。

日産自動車が着手したダイバーシティ経営は工場内でも成果を見せています。栃木工場では鋳造ラインの改善・生産性向上の取り組みに対して女性従業員の声を反映させることで、女性従業員数の増加を実現しました。

このように日産自動車は女性の活躍という形で、ダイバーシティ経営を成功させています。

高齢者の活用事例

株式会社小川の庄は、長野県にある製造業企業です。雪が多く働き手が少ない小川村に、もっと雇用を生み出したいという目的で設立されました。小川の庄のダイバーシティ経営は、従業員の年齢の多様性です。

小川の庄ではスローガンに「60歳入社・定年なし」を掲げ、熟練技術を有した高齢者を積極的に採用しています。体力がある若手層・マネジメントを担う中年層・知恵と気配りがある高齢層というように年齢ごとに役割分担をすることで、人材確保および生産性の向上を叶えました。また、互いの能力の違いを認め、リスペクトし合う雰囲気も生まれています。

結果として正社員の平均勤続年数は約11年となるなど、働きやすい職場環境が作られています。

外国人の登用を推進した事例

カシオ計算機株式会社は、外国人従業員でも働きやすい環境を作るというダイバーシティ経営に取り組んでいます。

外国人が日本で働く際の障壁はやはり言語の違いです。カシオ計算機はビジネス日本語検定の受講料の補助金を出すことで、外国人従業員の日本語力向上のサポートをしています。その結果、従業員同士でのコミュニケーションも活発化しました。

また外国人従業員の中には家族を母国に残して来日する方もいますが、母国帰国休暇という特別休暇制度を設けました。休暇の目的を明確化したおかげで、有給休暇が申請しやすいという副次的効果も得られています。

また、イスラム教の外国人労働者のためにお祈り部屋があるなど、カシオ計算機は文化や言語、国籍の違いを乗り越えて働きやすい環境作りに努めています。

障がい者登用を推進した事例

株式会社きものブレインでは、トップ自らが障がいを持つことから、障がい者が活躍できるダイバーシティ経営を行っています。

具体的には障がい者支援委員会を設立し、「知的・精神支援チーム」と「車椅子支援チーム」といったチームを編成することで、障がいを持つ従業員が必要とするサポートをしています。

さらに通常よりも業務を細分化することで、障がいを持つ従業員でも仕事ができるように職域開発にも取り組みました。これらにより、イノベーションの創出、 生産性向上など、様々な成果を上げています。

働き方改革を推進した事例

SCSK株式会社では、「人を大切にします」という経営理念の下、従業員の働き方や健康を改善するダイバーシティ経営を推し進めました。

例えば、リモートワークやフレキシブルオフィスを導入することで、労働時間の削減や柔軟な働き方改革を達成しています。このような施策を行った結果、2018年の社員意識調査では80%を超える社員が現在の仕事に誇りを持っていると回答しています。

また、ダイバーシティ経営を始めた2012年度から2018年度まで営業利益は138億円の増益を達成しています。
(参照元:新・ダイバーシティ経営企業100選


まとめ

ダイバーシティ経営とは従業員一人一人の多様性を尊重し、企業経営に取り入れることです。顧客ニーズの多様化、市場のグローバル化、少子高齢化や働き方の多様化といった時代の変化に伴い、ダイバーシティ経営の必要性は増大しています。

導入によって生産性や企業イメージの向上、採用力の強化と離職率の低下といった様々なメリットがあることも事実ですが、気を付けるべきポイントもあります。従業員の意識改革と一体感の醸成を行わない限り、ダイバーシティ経営の成功はありえません。

ダイバーシティ経営を自社に取り入れる際は、ご紹介した先行事例も参考にしながら、これらのポイントに注意して行いましょう。

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